鷹狩りの歌


  霰降る交野御野のかりごろも濡れぬ宿貸す人しなければ   濡れ濡れもなほ狩り行かむはし鷹の上毛の雪をうち払ひつつ  これは、長能道済と申す歌詠みどもの、鷹狩りを題にする歌なり。 ともによき歌どもにて、人の口にのれり。後、人々、我も我もと争ひて、 日ごろ経けるに、なほこのこと今日切らむとて、ともに具して四条大納言のもとにまうでて、「この歌二つ、互ひに争ひて、今に事切れず。 いかにもいかにも判ぜさせたまへとて、おのおの参りたるなり。」と言へば、 かの大納言、この歌どもをしきりに詠め案じて、 「まことに申したらむに、おのおの腹立たれじや。」と申されければ、 「さらに。ともかくも仰せられむに、腹立ち申すべからず。 その料に参りたれば、すみやかに承りて、まかり出でなむ。」と申しければ、 さらばとて申されけるは、「交野の御野のといへる歌は、 ふるまへる姿も文字遣ひなどもはるかにまさりて聞こゆ。 しかはあれども、もろもろのひが事のあるなり。 鷹狩りは、雨の降らむばかりにぞ、えせで止まるべき。 霰の降らむによりて、宿借りて止まらむは、あやしきことなり。 霰などは、さまで狩衣などの濡れ通りて惜しきほどにはあらじ。 なほ狩り行かむと詠まれたるは、鷹狩りの本意もあり、 まことにもおもしろかりけむとおぼゆ。歌がらも優にてをかし。 撰集などにも、これや入らむ。」と申されければ、道済は、舞ひかなでて出でにけり。 問題:四条大納言は、作歌において何が大切だと述べているか 問題:四条大納言はどちらの歌が優れていると判断したか 口語訳へ 品詞分解へ 読み方問題へ 戻る