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生命のコントロールと小さな命と倫理


人工授精

▲AIH( 配偶者間人工授精)
▲AID(非配偶者間人工授精)




**01年**

6月5日
宮城の病院で凍結卵子使い出産に成功国内初

**  不妊治療の一つとして、宮城県の病院が凍結保存した卵子と夫の精子を体外受精させ、妊娠・出産に成功していたことが5日、分かった。凍結卵子による妊娠・出産は技術的に難しく、国内での成功が明らかになったのは初めて。  この病院は同県古川市の「レディースクリニック京野」(京野広一院長)。京野院長は「卵巣がんなどの放射線治療で不妊になっても、卵子を凍結しておけば妊娠が期待できる」としている。  凍結保存した卵子で出産に成功、国内初 宮城・古川  宮城県古川市のレディースクリニック京野(京野廣一院長)で、凍結保存した妻の卵子を夫の精子と体外受精させ、妊娠・出産に成功していたことが5日、わかった。凍結保存した精子による体外受精の成功例は国内でも多いが、凍結卵子での出産が明らかになったのは初めて。  クリニックの説明によると、出産したのは30代の女性で、4月に3100グラムの女児を産んだ。母子ともに健康という。  女性は卵管閉そくで自然な状態での排卵が難しかったため、夫婦の希望で体外受精することを決めた。昨年7月、妻の卵巣から9個の卵子を取り出したが、夫の精子を同時に採取できなかったため、成熟卵5個をいったん凍結保存。5、6時間後に精子が採取できたことから卵子を解凍した。受精に成功した2個を、妻の子宮に戻した。約18時間後に1個の着床が確認されたという。  卵子の凍結は、染色体の損傷や、卵子の表面が固くなって精子が入り込めなくなるなどの危険性が指摘されている。京野院長は今回、そうした技術的な問題がクリアできたとしている。  日本産科婦人科学会は会告で、不妊治療が必要な夫婦に限り、卵子の凍結を認めている。  日本で初の体外受精による出産を成功させた鈴木雅洲・東北大名誉教授は「数時間以内の冷凍に果たして意味があったのかなど、問題もあるが、新しい技術を積極的に導入する姿勢は評価したい」と話している。(12:12) 凍結卵子で体外受精、妊娠・出産  凍結保存した妻の卵子を使った妊娠・出産に、宮城県古川市の産婦人科クリニックが今年四月に成功していたことが、五日わかった。凍結精子を使った妊娠・出産は国内でも数多く行われている。同クリニックによると、凍結卵子を解凍し、夫の精子と体外受精して妊娠・出産に成功したのは、世界的には三十例ほど報告されているが、国内では珍しいという。成功したのは古川市のレディースクリニック京野で、今年四月、三千百グラムの女児が産まれた。  京野廣一院長(50)によると、出産したのは東北地方の三十歳代の女性で、卵管が閉じていたため、昨年七月、卵巣から卵子を採取。この際、夫の精子が得られず、卵子を凍結した。数時間後に解凍し、三個の卵子に顕微鏡を使った「顕微授精」をし、受精に成功した二個の卵子を子宮に戻したところ、妊娠したという。  京野院長によると、卵子の凍結には、プロパンデイオールという保護剤を使い、約二時間かけて徐々に凍結させる方法を採用した。イタリアのボローニャ大学では、一九九七年から十三人の出産に成功しているという。  国内では数年前に東京都内の不妊治療クリニックで、一組の夫婦に対し同様の治療を実施。妻の卵子を約二十四時間、凍結保存後に体外受精させ、妊娠・出産にこぎつけた例がある。  京野院長は「がん治療などで放射線を使った化学治療をする場合、卵子が使えなくなってしまうが、治療前に卵子をとっておけば、自分の卵子で妊娠できる。四十歳前で月経が終わってしまう早発卵巣不全の人にも、不妊治療として期待できる」と話している。 (6月5日11:52)

6月4日
英の女子大生米で高額報酬目的に卵子提供

**  3日付の英紙は、大学の学費支払いなどで借金を抱える英国の女子大生が、高額の報酬を目的に、米国で体外受精のための卵子を提供する例が増えていると報じた。報酬は通常約2400ポンド(約40万円)だが、学歴、運動能力、容姿、人種など依頼者側が望む条件に合えば1万ポンド(約170万円)に上るという。(共同)

6月4日
生殖、遺伝の専門カウンセラー養成へ

**  生殖医療技術の進歩に伴い、心の面も含めたサポートが必要になってきたことから、日本産科婦人科学会は今夏、遺伝学などに専門的な知識を持ち、適切なアドバイスのできる相談員の養成に乗り出す。会員の産婦人科専門医を対象に数回の講習会を開き、修了者を「生殖・遺伝カウンセラー」として認定する予定だ。  第1回の講習は、遺伝学や生命倫理の専門家を講師に招いて8月に実施、約50人が参加する。 

5月27日
代理出産「既成事実で問題提起」と長野の根津院長

** ■代理出産、「既成事実で問題提起」と根津医師  説明手続きには「反省点」も   不妊に悩む夫婦のために代理出産を手がけた長野県下諏訪町の諏訪マタニティークリニック院長、根津八紘(やひろ)医師が27日、改めて朝日新聞社とのインタビューに応じた。旧厚生省の専門委員会が禁止の方針を打ち出したことについて、根津院長は「そもそも委員の多数決で決める問題なのか」などと国内の議論不足を批判。「患者の声を消さないため、ゲリラ戦ではあるが、既成事実をつくって問題提起した」と説明した。一方、患者への説明内容を文書に残さなかった点や、当事者の気持ちに配慮して妊娠中期からのかかわりを控えた点などについては、「問題はあったかもしれない。今後の反省点だ」と認めた。  インタビューの中で、根津院長は、生殖医療をめぐる過去の指針づくりが日本産科婦人科学会にゆだねられていた点に触れ、「学会は患者の声を会告に反映させ、問題点が出てきたら時代に即して変えていくという機動力に欠けていた」と指摘。旧厚生省の専門委員会が、代理出産の禁止という方針を出したことについて、「精子や卵子などの提供を認めながら、子宮を貸すことを否定している。根拠がわからない」と批判した。  一方、今回の事例を通じて「いっぱい反省点はある」としたうえで、当事者への説明項目を記載した文書をつくっていなかったことや、結果的に家族関係がぎくしゃくしたことなどを挙げ、「(関係する家族全員の)フォローも考えるべきだった」と述べた。

5月19日
代理出産「3年で5例を試みる」長野の根津院長

**  不妊に悩む夫婦のために、代理出産を進めていた長野県下諏訪町の諏訪マタニティークリニックの根津八紘(やひろ)院長は、過去3年間で計5組の代理母による出産を試みていたことを文書などで公表した。無事赤ちゃんが生まれたのは1組だったという。さらに、妊娠後や出産後に患者側と接点がほとんどなかったことを認め、支援、相談態勢は十分でなかったことも浮かび上がった。
 文書などによると、根津院長は6年ほど前から、代理出産についての相談を受けていた。
 代理出産を試みた5ケースすべてが姉妹間によるもので、出産までこぎつけた今回のケースを除くと、体外受精した受精卵が着床しなかったり、流産したりしたという。
 今回のケースは、妊娠中の事故で子宮を失った姉夫婦のために30代の妹が代理母になっていた。事前に1時間ほどの説明をしたという。根津院長のもとで移植して妊娠後、別の医療機関で出産したという。
 根津院長は、代理母になった妹夫婦や姉夫婦と根津院長はその後、疎遠になっており、家族関係もぎくしゃくしていることを明らかにしていた。
 産んだ妹から1度、手紙を受け取った後、患者側の状態を把握できない状態が続いていたといい、事実上、事後ケアができていなかった。根津院長はこの日、「関係者の家族が精神的に不安定な状況にあるみたいだが、これは時間が解決してくれるだろう」と述べた。
 流産したケースの患者側へのケアについても「落ち着いたころにお便りをと思っているが、まだコンタクトはとっていない」と認めた。
 不妊の夫婦のために、別の女性が代わりに出産する「代理母」という方法での出産は米国などでは80年代から行われていて、日本人夫婦が渡米して産んでもらったケースの報告もあるが、国内での実施が確認されたのは初めて。厚生労働省は全面禁止の方針を打ち出している。
 生殖医療は、不妊に悩む夫婦の精子や卵子を使うだけではなく、第三者に提供してもらうなど、さまざまな妊娠・出産の形態をつくってきた。
 代理母は、子宮がないなどの理由で子どもを産めない夫婦に、血のつながりのある子どもを授ける。しかし、代理出産する女性が「生殖の道具」になるという批判も強い。
 姉妹とも結婚していて双方の夫婦から相談を受けた。代理出産に協力したいという姉妹の強い願いもあって決断したという。
 2組の夫婦に説明し、意思を確認。不妊の夫婦の精子と卵子を体外で受精させた。受精卵を移植。妊娠し、今年に入って出産した。子どもは順調に育っているという。
 現行法では出産した女性が母親になる。出生届を出した後に養子縁組されたという。
 ほかにも子宮をなくした夫婦について代理母を試みたことがあるものの、流産した。
 代理母は、妊娠する女性を、心身ともに長く拘束する。このため妊娠・出産で子どもに愛着がわき、海外では出産後に依頼した夫婦との間でトラブルが起きている。
 米国では、連邦法による規制はないため、代理母によって生まれた子供の養育権などをめぐって裁判が起きている。独仏では法律で禁止され、英国は営利目的を禁じているが、善意にもとづく代理母については認められている。日本人夫婦が渡米してあっせんを受け、子どもを産んでもらったケースも数十例、報告されている。
 生殖補助医療のあり方を論議した旧厚生省の厚生科学審議会専門委員会は昨年末にまとめた報告書で代理母を禁止した。これを受け、厚生労働省は法律を整備し、罰則をつけて禁じる方針だ。
 金銭がからむといけないが、子宮を失っても子どもが欲しいという夫婦がいて、身内が純粋な気持ちで手助けしたいと言うなら認めていいのではないか。議論を深めてもらいたいとしている。  
 数組の夫婦から代理母(による出産)をお願いしたいという相談があり、その中の夫婦を対象にした。無事出産したケースは、依頼主の夫婦と代理母となる姉妹の夫婦に来てもらい、意思を確認して行った。
「代理母」には様々な議論もあり、旧厚生省の専門委員会も禁止する報告を出したが商業ベースは問題がある。ただ、不妊の夫婦のために肉親が純粋な気持ちでお手伝いしたいという場合まで禁止すべきではない。国にそんな権利はない。
   生殖医療では、子どもができたら、もう放っておいて、という患者さんは多い。患者や家族へのカウンセリングなど事後ケアが必要なのか、気持ちはうつろいやすいから。
 家族が「おばちゃんが協力してくれたから、あなたが生まれたんだよ」とちゃんと、子どもが大きくなってケアも大切で説明してほしい。やましいことはないのだからセンセーショナルに取り上げたりマイナス面だけ強調したりすべきでない。いまは静かに見守りたい。
       ◆代理母
 夫婦の精子と卵子を体外受精させてできた胚(はい)を妻以外の女性の子宮に移植して妊娠、出産してもらう方法と、夫の精子を妻以外の女性に人工授精する方法がある。
 夫婦の胚を使う方法は「借り腹」で、産む女性は「ホスト・マザー」と呼ばれる。子どもは夫婦の遺伝子を引き継ぐ。
 もう一つの方法は妻の卵子も使えない場合で、出産する女性は「サロゲート・マザー」といわれる。子どもは夫と代理母の遺伝子を引き継ぐ。

5月5日
遺伝子改変ベビー米の不妊治療病院で約30人

**  不妊症の女性の卵子に健康なドナー(提供者)から採取した卵子の細胞質を注入する治療で、米国で約30人の赤ちゃんが誕生していました。赤ちゃんは両親だけでなく、ドナーの遺伝情報も受け継ぐ。英BBCテレビは4日、「世界初の遺伝子を改変した赤ちゃんの誕生」と報道した。遺伝子操作に結びつく可能性があり、安全性や倫理面で論議を呼びそうです。
 この不妊治療は米ニュージャージー州の民間不妊治療施設「セント・バーナバス生殖医学科学研究所」を中心に実施されている。
 同研究所は、卵子の細胞質に問題があって受精、妊娠できないと判断した症例に対し、ドナーの卵子から取り出した細胞質を卵子に注入する治療法を開発し、英医学誌「ランセット」で発表した。
 BBCの報道によると、同研究所だけですでに15人の赤ちゃんがこの手法で生まれた。赤ちゃんはいずれも健康だったという。生後1年の子供2人の遺伝子を調べたところ、両親に由来しない少数の遺伝子が確認された。
 両親の遺伝情報は主に、精子と卵子の核内の染色体上にあるDNAによって子供に受け継がれる。一方、細胞質にあるミトコンドリアにもDNAが存在し、遺伝情報を伝える。この手法で誕生した赤ちゃんは両親から受け継いだ遺伝子DNAのほか、母親とドナーのミトコンドリアDNAを持つことになる。
 人間の遺伝子を操作する治療として、遺伝子治療が世界各地で試みられているが、不妊治療で遺伝子を改変する技術が使われたのは初めて。同研究所は「核内遺伝子の設計図は変わらない」との理由から、「遺伝子操作に該当しない」と主張している。

遺伝子「改変」ベビーの手法で染色体異常2例
 両親のほかに第三者の遺伝子を持つ「遺伝子改変ベビー」を誕生させた米国の実験的不妊治療で、少なくとも2例の染色体異常が生じていたことが18日わかった。流産と人工中絶で出産には至らなかったという。ワシントン・ポスト紙が報じた。
 この手法では、高齢などで卵子の状態が悪く、妊娠しにくい母親の卵子に、受精能力を高めようと別の女性の卵子の細胞質を注入し、体外受精後に母親の子宮に戻す。聖バーナバス医療センター生殖医科学研究所(ニュージャージー州)は、1歳になった2人の細胞質に、卵子の細胞質を提供した女性の遺伝子が混在していたと英専門誌に論文を発表していた。
 ワシントン・ポスト紙は、内部文書から、同研究所は17例に実施し、うち2例はターナー症候群という染色体異常を生じて、出産に至らなかったと報じた。同研究所は論文で、生まれた赤ちゃんはみな健康だとして、異常例は報告していなかった。
 同研究所は「実施手法と因果関係があるとは考えていない」とコメントしたが、ターナー症候群の発生頻度は新生児では3000人に1人程度。流産などを含めても妊娠1000例で15例程度といわれ、17例中2例の発生は多すぎると専門家は指摘している。
 米生殖医学会のマイケル・ソールズ会長は「情報をきちんと公開しないと、我々にも『何か隠しているのではないか』と疑いの目が向けられる」と、ロイター通信にコメントした。
 この手法では、世界で約30人が生まれているとされる。

5月4日
受精に不可欠な酵素を東大グループが確認

** 東大医科学研究所腫瘍(しゅよう)分子医学分野(竹縄忠臣教授)の深見希代子講師らの研究グループが、受精で精子が卵子に入り込む際に必要不可欠な酵素をマウスで特定しました。
精子が卵子に入り込めない異常は人間でも、不妊の男性の約1割にみられるといわれています。この酵素は人間にも共通で、男性不妊治療の基礎研究に役立つと期待されます。成果は3日付の米科学誌「サイエンス」に掲載されます。

特定されたのは「ホスホリパーゼCデルタ4」と呼ばれる酵素。深見さんらが5年前に肝臓の細胞から発見した酵素だが、具体的な働きは不明でした。
研究グループは、遺伝子工学を使い、体内でこの酵素を作れない変異マウスを誕生させた。変異マウスはほとんど異常がなかったが、オスは不妊だった。
原因を調べると、正常なマウスでは、精子は卵子とぶつかると卵子の周囲の「透明帯」と呼ばれる壁を溶かして卵子に入り込むのに、変異マウスの精子は透明帯を溶かせず、受精が起きないことが分かった。変異マウスの精子でも、人為的に卵子に注入すれば受精は可能で子供が生まれました。
また正常なマウスでは、透明体を溶かす働きのある精子の先端部分に、この酵素がたくさんあることも分かり、この酵素が、透明帯を溶かす反応の「引き金」役を果たしていると結論づけました。

男性の不妊は、子供を作ろうとするカップルの4〜5%を占め、さらにこの約1割が精子が卵子に入り込めない異常ということです。 

3月31日
クローン作成に関与すべきでない 日本不妊学会

**  不妊治療の専門医や研究者らで作る日本不妊学会は、東京都内で倫理委員会を開き、「会員は人間のクローンの作成に関与すべきではない」との見解をまとめた。この問題では、米国やイタリアの不妊治療専門医のグループが、不妊治療の一環としてクローン人間を誕生させる計画を1月に発表し、波紋を呼んでいる。

3月16日
「産まない選択、尊重を」 日産婦倫理委見解案

** 夫婦以外の卵子や精子を使った体外受精の是非などについて検討していた日本産科婦人科学会の倫理委員会は、「子をつくらないことを決めたカップルの意思を尊重すべきだ」との条項を新たに加えた見解案をまとめた。15、16の両日、厚生労働相や文部科学相などに提出する。不妊治療に携わる当事者らの団体が、こうした考えを示すのは異例だ。

 見解案は、重度の不妊症や夫婦ら自身の選択を含め、さまざまな理由で「子をつくらない」と決めたカップルが周囲から心理的な圧迫を受けることのないよう、十分な配慮がされるべきだとしている。

 倫理委は2月、卵子や精子の提供を受けた体外受精について、法整備や「提供者は匿名の第三者に限る」といった条件を前提に容認する見解案を公表した。この案に、今回の条項が加わった。原案は、同学会から諮問を受けた倫理審議会(委員長=武部啓・近畿大教授)が提出していた。

 学会幹部の1人は「国の少子化対策が、結果として不妊患者らを追いつめることのないよう、行政にも配慮をお願いしたい。今の社会風潮が変わるきっかけになってくれれば」と話す。

2月23日
日本産科婦人科学会の倫理審議会卵子提供認める答申

** 日本産科婦人科学会の倫理審議会(委員長・武部啓近畿大教授)は、夫婦以外の卵子や精子を用いる体外受精の是非を検討していましたが、卵子などの提供者を匿名の第三者に限って認める答申をまとめ学会の倫理委員会に提出しました。
答申は、事実婚の夫婦にも体外受精を認めるがただし、現行法では事実婚の夫婦間に生まれた子は法律婚の子より相続分が少ないため、これを是正する法改正が前提だと条件を付けました。
第三者の卵子提供による体外受精は、提供の際に高額な金銭が支払われないことなどを条件に認めました。精子提供は、夫以外の精子を使う人工授精が国内で1万例以上実施されている現状を考え、体外受精でも認めざるを得ないと判断。受精卵は、不妊治療のために作られた第三者の受精卵が不要になった場合に限り、提供を認めました。
夫婦の兄弟姉妹など近親者からの卵子、精子、受精卵の提供は
親族間での争いなどが起こりやすい
生まれる子供に精神的負担をかける恐れがある
不妊夫婦の近親者が提供を強要される心理的圧力を受ける恐れがあるなどの理由で禁じることにしたということです。この見解は、厚生省専門委員会の特例見解と対立する内容となりました。

**00年**

12月28日
厚生省専門委が近親者からの精子や卵子の提供を条件付きで認める最終報告書

** 厚相の諮問機関である厚生科学審議会の「生殖補助医療技術に関する専門委員会」(委員長・中谷瑾子慶応大名誉教授)が、近親者からの精子や卵子の提供を条件付きで認める最終報告書をまとめました。
子どもを産むことのできない夫婦への医療のあり方を検討してきた厚生省は、夫婦以外の第三者の精子や卵子、受精卵(胚〈はい〉)の利用について、医療機関が守るべきルールなどを定めた新法の制定を視野に、具体的な検討に入る方針を明らかにしました。これを受けて法務省などとの協議に入ります。
報告書によると、

国が指定した医療施設に限定して提供精子などを使う生殖医療を行う。
不妊のため子どもを持てない法律上の夫婦に限り、第三者から提供された精子や卵子を使った体外受精や受精卵の移植ができる。
精子や卵子の提供は、匿名で無償の第三者が原則。提供者がいない場合は、特例として兄弟姉妹などの近親者でも、公的機関の事前審査のうえで認める。生まれた子どもが、遺伝上の親を知る権利(出自を知る権利)は制限され、個人が特定できない範囲で、提供者が認めた部分しか知ることができない、とされた。
生殖医療を使って産んだ女性を母、同意した夫を父とする内容を法律に明記する、他人に子どもを産んでもらう代理母や、営利目的のあっせんを禁止し、刑事罰を伴う法規制の導入も求めている。
提供者の情報を管理する公的管理運営機関、倫理や法律、技術の面から指針をつくる公的審議機関、カウンセリングの体制などを3年以内に整え、国民的な論議が必要だとして、それまでは、現在行われている提供精子による人工授精だけを認めることにしています。

11月28日
新潟大医学部などでHIV除去し体外受精

** エイズウイルス(HIV)に感染した夫の精液を使い、ウイルスを除去する処理「パーコール法」を施した後で体外受精する30代の夫婦に対する試みを、新潟大医学部産婦人科(田中憲一教授)と荻窪病院(東京都杉並区)の花房秀次血液科部長らが12月に共同で実施するということです。
すでに10月に新潟大医学部倫理委員会(委員長・山本正治医学部長)は、夫婦に十分な説明をして同意を得、カウンセリングもすること、胎児の感染が分かった場合は万全の措置を取ること、などを条件にこの方法を承認しています。国内で、HIVを除去した精液を使った人工授精の例はありますが、体外受精の試みは初めてとみられています。
薬害エイズ被害者の救済団体である「はばたき福祉事業団」(東京都)の大平勝美・理事長の話
「薬害エイズ被害者の多くは20代から40代と結婚生活において最も大事な年代になっている。子供が欲しいという願望が強く、苦しんでいる人たちは多い。配偶者に感染しない安全な方法が待ち望まれていたので、たとえ万が一感染ということがあっても、子供をもうける可能性を開いた意味は大きい。今回のケースが成功し、あちこちの病院で行われるようになってくれればうれしい」

 

11月12日
厚生省専門委は不妊治療に第三者提供の胚利用認める

** 「生殖補助医療技術に関する専門委員会」(委員長、中谷瑾子(きんこ)・慶応大名誉教授)、不妊治療のあり方を検討している厚生科学審議会(厚相の諮問機関)は第三者から提供された卵子と精子を体外受精させて作られた受精卵(胚(はい))の利用を認めることになりました。兄弟、姉妹など近親者からの精子、卵子、受精卵の提供も条件付きながら新たに認め、不妊治療の範囲を拡大したことになります。
同専門委は、これまで、体外受精における精子、卵子の第三者からの提供、提供された受精卵の子宮への移植を原則として認めていました。しかし、受精卵は、別の夫婦が自らの不妊治療のために体外受精させ、余った受精卵に限定していました。会合では、夫婦ともに不妊の原因があり受精卵の提供なしには妊娠できないケースに限り、提供された精子と卵子を体外受精させ新たに作られた受精卵の利用も認めることで合意しました。
精子、卵子、受精卵の提供者については、匿名の第三者を原則としていますが、第三者から得られない場合に限り例外的に兄弟、姉妹などの近親者からの提供も匿名で認め不妊治療を行う医師は実施内容や理由を事前に厚生省に申請し、審査を受けなければならないとしました。
また、提供を受けて生まれた子供が遺伝上の親を知る権利に関しては、提供者が承認すれば、子供は成人後に、遺伝上の親の身長や学歴など個人が特定されない範囲の情報を得ることができるとしました。さらに、提供者に関する個人情報は公的な情報管理機関で保存され、子供は結婚する場合に相手が近親者かどうかの確認を同機関に求めることも出来るようになります。
こうした規定は、3年以内に法制度などを整備したうえで実施され、それ以前には普及している提供精子による人工授精以外は「実施すべきではない」との見解を示し年内にもまとめる最終的な報告書に盛り込まれます。

3月27日
生殖医療法の制定など日弁連が厚相に提言

** 夫婦間以外の精子や卵子を利用した生殖補助医療によ使い生まれてくる子供や利用者の人権を保護するために「生殖医療法」を制定すべきだとする提言を日本弁護士連合会(小堀樹会長)は、実施医療機関などによる情報の管理機関を設置した上で、子供が成人に達した場合に提供者の記録を閲覧できることなどを盛り込んだ生殖医療法の制定を丹羽雄哉厚相に提出しました。
提言は生殖技術の利用者を法律上または事実上の夫婦に限るとし、第三者から提供された精子や卵子の利用を条件付きで認めました。しかし、第三者の女性に夫の精子を使って代理出産させる代理母は、出産する女性の心身に多大な影響を与えることから禁止すべきだ、としました。
卵子提供などを有償であっせんするような商業主義を排除することを求め、違反者には刑罰を科すことも盛り込んでいます。
提言を受け、この日開かれた厚生科学審議会(厚相の諮問機関)の生殖補助医療に関する専門委員会は、次回委員会で日弁連から趣旨説明を受けることを決め、作業グループを作って問題点の整理を進め、その結論を待って最終的な議論に入る予定です。 

3月16日
体外受精年間に初めて1万人

** 1983年の東北大学での初の出産があってから、体外受精による子どもの数が、1998年の1年間に初めて1万人を超えていたことが、日本産科婦人科学会の調べで分かリました。
学会は、体外受精を実施した全国の不妊治療施設などに、生まれた子どもの数を毎年報告するよう求めています。これまでの集計で、98年に治療を受けて生まれた子どもは1万数百人になり、うち約3分の1は、細い管で精子を直接卵子に送り込む顕微受精で行われました。 かつて試験管べビーとも呼ばれた技術が、不妊治療として関係者の努力によって定着してきています。
厚生省の統計によると、98年の出生数は約120万3千人で約120人に1人は体外受精で生まれたことになります。 体外受精で生まれた子どもは97年までの累積で3万6472人。今回の集計で4万7千人ほどに達したとみられます。

体外受精は、女性の卵管がつまっていたり、男性の精子が少なかったりする夫婦に卵子と精子を体外で合体させ、受精卵を母体に戻して妊娠をめざして実施されています。
妊娠の確率は2割強なので繰り返し治療を受ける夫婦が多く費用は1回に10数万円から60万円ほどかかり、保険は適用されませんので経済的負担が問題になってきています。 現在は認められていない体外受精の保険適用を求めます。

2月17日
非配偶者間体外受精を条件付きで認める見解

** 日本産科婦人科学会の倫理審議会(委員長、武部啓・近畿大教授)は、夫婦以外の第三者から提供された卵子や精子を使った非配偶者間体外受精を条件付きで認める見解をまとめました。
個別審査を条件としたうえ、現在、認められている第三者の精子を使った非配偶者間人工授精(AID)と同様に、卵子、精子の提供は夫婦とは無関係の匿名の第三者に限定し、今月末に開かれる同学会の倫理委員会に答申するとしています。
倫理審議会では、体外受精はすでに一般的な医療として定着していると位置付けたうえで「第三者からの提供が精子では認められ卵子では認められないのは合理的でない」として、非配偶者間体外授精の実施を認めました。さらに遺産相続などの問題が将来、起こりえるとして、卵子、精子の提供は夫婦とは無関係の第三者に限定しました。
実施に当たっては、各機関の倫理委員会での審査を経たうえ、1例ごとに学会で審査することを義務付け、さらに夫婦、提供者に対しては学会としてのカウンセリング体制を整えたうえでの、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を求めました。
武部委員長は「実施施設の倫理委といっても、きちんとした倫理委がどの程度あるかは疑問なので、学会での個別審査が絶対必要」と説明しています。また、同学会長の青野敏博・徳島大教授は「さまざまな条件がクリアできた場合にのみ認めるもので、一般の人たちにも理解してもらえる内容になったと思う。学会としては国レベルでの審議を考慮して、検討していく」と話しています。

**99年**

8月24日
根津医師が会見で非配偶者間で子供5人誕生を公表

** 日本産科婦人科学会が会告で禁止している非配偶者間体外受精の実施を公表した「諏訪マタニティークリニック」(長野県下諏訪町)院長の根津八紘医師は、東京都内で会見し、非配偶者間体外受精により新たに5人の子供が誕生したことを明らかにしました。非配偶者間体外受精で誕生した子供は10人になりました。
根津医師はこれまでに40〜50組の不妊夫婦に対して、兄弟や姉妹から提供された精子、卵子を使いいずれも兄弟、姉妹からの提供で、夫婦の友人などからの提供ではない非配偶者間体外受精を行い1998年6月以降、卵子提供で6人が妊娠し、うち3人が出産し双子を含めて4人の子供が生まれています。精子提供では4人が妊娠し、うち1人が出産しましたが直後に子供は死亡。

7月9日
凍結保存した夫の精子を使って顕微受精を行い妊娠に成功

** 北九州市のセントマザー産婦人科医院(田中温院長)で、妻の卵子の外側部分の「透明帯」を使って凍結保存した夫の精子を使って顕微受精を行い、妊娠に成功したことが、熊本市で開かれた日本受精着床学会で発表されましたた。米国で開発された手法で、成功例は世界で数例報告されていますが、日本では初めてということです。

 

6月19日
日本産科婦人科学会はネズミで育てた精子の受精実験申請を不受理

**ミオ・ファティリティ・クリニック(鳥取県米子市、見尾保幸院長)がネズミの精巣で育てた人間の精子を人間の卵に受精させる実験の申請について、「精子が本当に成熟できるのかどうかについて、学術的な証拠がそろっていない」として、今回は申請の受理を見送りました。
見尾院長は「審議された内容がわからないので、学会からの問い合わせを待つしかない。鳥取大学医学部の倫理委員会が実験を承認しており問題はないはずだ。できれば学術的に研究できる範囲で実験をしたい。(大学や学会が)個々に判断するのではなく、国がガイドラインを設けるべきではなかろうか」と話しています。
この実験では、鳥取大学医学部の研究グループがネズミの精巣の中で育てた人間の精子を使い受精卵を培養し、「後期胚盤胞(はいばんほう)」と呼ばれる段階にまで育つかどうかを調べる受精実験を同医学部は、承認しています。

4月16日
根津院長(諏訪マタニティークリニック院長)が友人の卵子による体外受精を予定

**非配偶者間による体外受精の実施を国内で初めて公表した長野県下諏訪町の根津八紘・諏訪マタニティークリニック院長では、卵子、精子の提供は兄弟姉妹間に限るという同院独自のガイドラインを設けていますが、友人から提供を受けた卵子による体外受精を、「あくまで原則であり、当事者が納得すればいい」と判断し、5月初旬に実施する予定を公表しました。
根津院長によると、『体外受精を受けるのは関西地方に住む30歳代の夫婦。妻は早発性閉経のため卵子ができず、姉妹もいない。友人は出産経験があり、夫はいない。1月下旬に夫婦と友人の三人で同院を訪れ、友人が卵子提供を申し出た。その後も三人の意思が固いことを確認したうえで実施に踏み切ることにした。この非配偶者間の体外受精では友人から卵子を取り出し、夫の精子と体外受精させたうえで妻の子宮内に移植する。三者間に金銭の授受はなく、インフオームド・コンセントも兄弟姉妹間の場合と同じ内容だった』としています。
同院ではこれまで約10組の夫婦が非配偶者間の体外受精による妊娠、出産に成功し現在も約30組が治療を受けています。いずれも、兄弟姉妹から卵子や精子の提供を受けて行われています。
日本産科婦人科学会は非配偶者間の体外受精を認めておらず、根津院長は会告に違反したとして学会を除名されましたが、院長は学会を相手取り、地位保全を求める訴訟を東京地裁に今月中にも起こすと話しています。

4月6日
根津院長(諏訪マタニティークリニック院長)が除名撤回など仲裁申し立て

** 夫婦間以外の体外受精を行い、日本産科婦人科学会のガイドラインに違反したとして昨年、学会を除名された根津八紘・諏訪マタニティークリニック院長(長野県下諏訪町)は6日、同学会に対し、会告の変更と、除名処分の撤回を求める仲裁を第二東京弁護士会に申し立てたことを明らかにしました。
申し立てによると、体外受精の対象を夫婦間に限定した学会の会告は、少子化など社会情勢や不妊治療に対する国民の意識が大きく変わり、現在では失効している。その会告を根拠に除名するのは、権利の乱用で違法、としています。
都内で会見した根津院長は「学会が、人工授精で精子の提供を認めているのに、体外受精で卵子提供を認めないのは女性差別。私を除名しただけで、生殖医療のあり方を議論しないのはおかしい」と申し立ての理由を説明しました。
仲裁は、弁護士などが仲裁人となり、当事者が話し合う手続きで、仲裁の結果は裁判に準じる効力を持ちますが、仲裁が不調に終わった場合、同学会を提訴する意向を明らかにしています。



**98年**

6月12日
日本産婦人学会が根津八絃医師の除名処分を含めて厳重に対応する方針

**日本産科婦人科学会(会長・佐藤和雄日大医学部教授)は臨時の倫理委員会を開き長野県下諏訪町の根津八絃医師(諏訪マタニティークリニック院長)が実妹の卵子と夫の精子を体外受精させて受精卵を妻の子宮内に移植し双子の男子を出産した医療行為について審議し、「こうした体外受精は倫理的に認められない」との見解をまとめました。
根津八絃医師の除名処分を含めて厳重に対応する方針をまとめましたが、具体的な処分は持ち越しました。

6月6日
不妊治療の在り方に関する夫婦以外の精子や卵子を使った人工受精研究

**不妊に悩む夫婦の妻(30歳代)が不妊症で卵子を作る能力がないと診断され実妹の卵子と夫の精子を体外受精させて受精卵を妻の子宮内に移植しました。妻は2児を妊娠し昨年、長野県下諏訪町諏訪マタニティークリニック(根津八絃院長)で双子の男子を出産していました。双子の男子は二人とも元気で、順調に育っているようです。
日本産婦人学会は夫婦以外の精子や卵子を使った人工受精は認めない見解を1983年にまとめています。