▽筋ジストロフィー遺伝子治療手術
デュシェンヌ型とベッカー型は、ともに筋肉が萎縮する遺伝性の難病「進行性筋ジストロフィー」の一種。デュシェンヌ型は最も多く、発症後10年で立って歩くことができなくなり、20歳前後で生命の危険にさらされるケースが多い。ベッカー型は、症状は似ているが進行が遅く寿命が長い。
デュシェンヌ型の患者の体内で、病状が、比較的軽いベッカー型のジストロフィンたんぱく質を遺伝子操作で作らせるのが狙いです
**01年**
6月7日
遺伝子治療が血友病に効果と米医師グループが医学誌に発表(
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血液を固める物質の遺伝子を組み込んだ皮膚の細胞を、血友病の患者に移植、出血などを抑える遺伝子治療で効果を確認したと、米国の医師グループが7日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。高価な血液製剤などを使わない血友病の治療に道を開く成果という。
米マサチューセッツ州のベス・イスラエル・デアコネス医療センターのデービッド・ロス博士のグループは、血友病患者の皮膚から「線維芽細胞」と呼ばれる細胞を採取。これに血液凝固物質を作る遺伝子を組み込み、クローン技術を使って培養。重い血友病の患者6人の腹部に移植して1年間経過を観察した。
すると6人中4人の患者で、血液中の凝固物質の濃度が移植前に比べ上昇していた。上昇の程度はわずかだったが、中には血友病患者にみられる出血の回数が目立って少なくなるなどの効果がみられた人もいた。
これらの効果は移植の約1カ月後から表れ始め、最も長い患者では1年間継続。移植した細胞に対する拒絶反応や目立った副作用はなかったという。
研究グループは「技術的に難しい点はなく、患者自身の細胞を使うので免疫反応も起こさないなどの利点がある」と指摘、さらに臨床試験を続ける。(ワシントン共同)
5月8日
末しょう性血管疾患に新遺伝子治療を容認
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末しょう性血管疾患に効果が期待される新遺伝子治療法で血管を作る働きなどがある肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子を使う治療計画について、厚生労働省の作業委員会と文部科学省のワーキンググループは、条件つきで実施を認めた。
大阪大医学部付属病院が、足の血管の壊死(えし)などを引き起こす末しょう性血管疾患を治すため申請していた。この病気の患者は国内に推定10万人以上。
国内ではこれまで遺伝子治療の対象は、がんなど命に直接かかわる病気に限られていた。致死性の病気以外で認められるのは初めて。被験者の選定や経過観察などをしっかり行うことが条件。
4月14日
遺伝子診断に専門医制度案、厚労省研究班
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遺伝子診断の広がりを受け、厚生労働省の研究班(主任研究者、古山順一兵庫医大教授)が、患者の不安や疑問に十分応じられる臨床遺伝専門医の認定制度案を固めた。認定試験が盛りこまれ、試験を検討する委員会を年内に設けるよう関係学会に働きかける。ゲノム研究の進展で診断の対象はどんどん増える。こうした知識に加えて臨床経験が豊かな医師の養成をめざす。
制度案では、日本人類遺伝学会や日本遺伝カウンセリング学会などが選ぶ委員、法律家、生命倫理の専門家らで専門医制度委員会をつくり、認定試験を実施する。受験資格は、委員会が指定した施設で3年以上研修していることや、一定の研究論文があることなど。
研修を受けた医師を遺伝医学の認定医としてきた学会もある。研究班の案は、学会独自の制度を統一する準公的なもので臨床経験をより重視した厳しい内容。早ければ来年にも始めたい考えだ。
研究班は、世界保健機関などのデータをもとに遺伝相談の必要があるとみられるのは国内で年に約3万2千件と分析。出産にかかわるものも含めると将来は30万件以上になるという。
しかし、遺伝子に関係するデータの扱いは難しい。がんや糖尿病といった生活習慣病の発病に遺伝情報がかかわるといっても影響はどの程度なのかはっきりしていない。差別や偏見、プライバシーの問題もからむ。
検査会社の団体が受注するときの倫理指針をまとめた。しかし、検査をするかどうかの判断や、結果をもとに診断するのは医師。これらの問題を十分に理解し、患者に説明できる資質も必要だ。
3月19日
足の動脈硬化に遺伝子治療
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厚生労働省の厚生科学審議会科学技術部会は、大阪大が申請していた、足の血管が詰まる病気に対する遺伝子治療臨床研究の実施を「安全性に注意し有効性は慎重に判定する」との条件つきで承認した。29日には文部科学省の専門委でも承認される見通し。生命に直接かかわらない病気の遺伝子治療の臨床研究は日本で初。
**00年**
▽国内の遺伝子治療/00/04/04現在
北海道大(ADA欠損症)
東京大医科学研究所(腎臓がん)
岡山大(肺がん)
名古屋大医学部付属病院(脳腫瘍)
11月13日
クローンヤギ、国内で初めて誕生
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農水省畜産試験場(茨城県茎崎町)は、国内で初めて成長したヤギの体細胞クローンヤギが誕生したと発表しました。
生後6カ月の雄ヤギから、成長ホルモンを分泌する脳下垂体前葉細胞の核「下垂体前葉細胞」をとり出し、遺伝情報をもつ核を除いたヤギの卵子に体外受精させ移植。1週間ほど培養した後、6月20日に仮親の雌ヤギの体内に入れ受胎させ12日に体重1.45キロの雄の子ヤギを出産しました。
研究グループは今後、細胞の遺伝子を操作し、成長ホルモンの分泌を抑えたヤギをつくる予定。「この研究を発展させて、薬品の原料になるたんぱく質を乳汁や血液中につくり出す「遺伝子改変クローンヤギ」の開発をめざすということです。
体細胞クローンづくりは羊や牛、豚などで成功し、ヤギも海外で報告例があります。
9月18日
万能細胞をカニクイザルの体外受精卵で試作に成功
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京都大や滋賀医大、近畿大などでつくる研究グループは、あらゆる組織や臓器になる可能性があるため「万能細胞」と呼ばれる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を、カニクイザルとニホンザルの体外受精卵から作ることに成功したと発表した。米国では既に、人間やアカゲザルなどのES細胞が作られているが、グループは「カニクイザルは日本の動物実験ではよく使われる種類で、ES細胞の医療への応用についての今後の研究に役立つだろう」と話している。
ES細胞を使うと、神経細胞や血管、臓器などを作って人体に移植する「再生医療」に道を開く可能性があり、注目されている。グループはこれまで、マウスを使った研究を進めてきた。
グループは、カニクイザルとニホンザルの体外受精卵を、受精7〜9日後の胚盤胞と呼ばれる段階まで分裂させ、その一部を取り出して培養を重ねることで、ES細胞を取り出すことに成功した。 今後は、安定して増殖できる方法の研究を進める。来年までにはその方法を確立し、どのような条件下で培養すればどんな細胞や組織になるかを探る研究を始めたいという。
グループ代表の中辻憲夫・京大再生医科学研究所教授は「マウスでできたことが人間でできるとは限らず、できた細胞を移植してみる実験にサルは欠かせない。体外受精を使えば効率的にES細胞を作ることもできるので、世界の研究者に無償でES細胞を提供していきたい」と話している。
9月7日
大阪大で血管治療を人工遺伝子を使う臨床研究計画を同大医学部倫理委員会に申請
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大阪大の荻原俊男教授(加齢医学)らが新しい人工遺伝子を使う治療を開発、臨床研究計画を足の血管が壊死(えし)する閉そく性動脈硬化症の患者と、心臓のまわりの動脈硬化が進んだ患者それぞれ12人を治療し、安全性と効果を確かめるということです。
動脈硬化を起こした血管は治療で広げても、再びつまる再狭さくががNFκBという遺伝子が特定のDNAに結合して、炎症を起こし血管壁を厚くして、再狭さくを起こしやすくすることがわかっています。
血管がつまるのを防ぐために、この特定のDNAの結合する部分を人工遺伝子として合成し、「おとり」として大量に入れると、いわば「ふた」となって、NFκBは本物のDNAに結合できなくなる。これで再狭さくを防ごうと考えています。
荻原教授らは、別の人工遺伝子を使う動脈硬化治療をすでに始めていますが、今回の人工遺伝子の特許は同大の森下竜一助教授が持っており、将来は、国産の新しい医療として期待が大きくなっています。
4月3日
脳腫瘍患者への国内初脳腫瘍患者へ遺伝子治療手術
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国内初の脳腫瘍患者に遺伝子治療手術が、名古屋市昭和区の名古屋大医学部付属病院で行われました。遺伝子の運び屋(ベクター)にウイルスを使う従来の方法に比べ安全性が高いとさ、外国製ベクターに頼らない純国産技術という点でも成果が注目される今回に手術は、微小な人工膜の袋(リポソーム)の中に、抗がん作用のあるインターフェロンを生み出す遺伝子を入れ、患部に直接注射する新しい手法を採用しました。
患者は、脳腫瘍の中でも治療の難しい悪性グリオーマ(膠芽腫(こうがしゅ)を昨年1月に発症した関西地方の30代の主婦。これまで2回、腫瘍の摘出手術を受けましたが3月初めに再発。
手術は、顕微鏡で確認しながら腫瘍を摘出後、摘出し切れない部分に、遺伝子治療薬1ミリリットルを数カ所に分け注射。
人工膜開発は吉田純・名大教授(脳神経外科)と応用生化学研究所(岐阜県御嵩町)の八木国夫所長(名大名誉教授)らが1988年に着手し、91年には動物実験で成果を上げ、今年1月、国レベルで実施が認められました。
3月27日
厚生省厚生科学審議会ーヒト組織移植組織売買の禁止など指針
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人体組織(骨や皮膚、血管、心臓弁など)を移植医療に利用する場合のルールづくりを検討していた厚生省厚生科学審議会の専門委員会(委員長・野本亀久雄九州大教授)は指針をまとめました。
指針では、医療機関などが設置して組織を採取・保管するボランティア組織バンクが、死体からの組織全般と、手術で生体から摘出された廃棄予定の組織の提供を受ける場合を想定。提供を受ける際はドナーや家族に十分説明したうえで書面で同意を得ることを定め、組織売買の禁止、組織売買を防ぐために、提供や移植に伴う対価の授受を、輸送料などの実費を除いて禁止。感染症防止の徹底を図ることなどを柱といています。
提供された組織を研究目的で使うことについては、感染症があるなどの理由で移植に利用できない場合で、研究目的であることをドナー側が同意した例に限って容認した。ただし民間企業に組織を提供する場合は、売買につながらないよう厚生省認可の非営利団体などを介して行うのが望ましいとした。このほか組織移植の透明性確保のため、バンクはドナーの個人情報を保護し、活動状況を公開するよう求めました。
研究目的での組織利用も一定の条件下で認めたが、組織を加工して販売するなどの商業利用の規制については法整備などの検討を望むとした。
無償で提供された組織を企業が販売するなどの商業利用の規制や、指針違反に対する罰則規定などについては、今後の論議にゆだねる事になりました。
2月15日
筑波大病院は白血病再発者に遺伝子治療の委員会を設置
**筑波大付属病院(深尾 立院長)は白血病再発者に遺伝子治療をするための遺伝子治療臨床研究審査委員会を設置し妥当性や安全性について審議し遺伝子治療に向けて、年内には文部省と厚生省に申請したいとしています。
中内啓光(免疫学教授)をリーダーとする研究グループから白血病再発者に遺伝子治療の臨床試験実施の治療計画が申請されたためで委員長は小山哲夫臨床医学系教授が務めます。
**99年**
9月1日
神戸大医学部は筋ジストロフィー遺伝子治療を申請
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神戸大医学部付属医学研究国際交流センターの松尾雅文教授(小児科専攻)の研究チームは、「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」に対し、患者の病状が、比較的軽い「ベッカー型」の筋ジストロフィーと同程度にするのが狙いで、人工的に合成したDNAを投与する遺伝子治療実験を同大倫理委員会に申請しました
松尾教授らは、筋肉を動かすジストロフィンたんぱく質を作る「ジストロフィン遺伝子」に注目し、人工的に合成したDNAの投与で、遺伝子からジストロフィンたんぱく質ができる途中の物質(mRNA)に働きかけ、デュシェンヌ型の患者の体内で、ベッカー型のジストロフィンたんぱく質を作らせるのが狙いです。これによって、ベッカー型と同程度に症状を軽くすることが可能ではないかと推測し。両方の型はどちらもジストロフィン遺伝子に異常があるが、異常の内容が異なっています。
今年1月、男児の細胞を培養して合成DNAを投与したところ、ベッカー型と同様のmRNAができたため同大倫理委に、治療を申請。同大倫理委は今後、安全性などについて慎重に判断するとしています。
7月28日
培養皮膚の治験計画を厚生省が受理
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英国に本社を置く医療用具会社が、傷の治療用に開発した人体の一部から採取した細胞を培養して、シート状にしてあり、傷などに張り付けて使う培養皮膚の治験計画届を提出、厚生省が受理したヒトの細胞や組織をもとに加工、生産した医療材料の臨床試験(治験)が国内で初めて行われることになりました。
治験をへて販売が承認されれば、人体の一部を加工した医療材料とし生産した培養皮膚の国内販売の準備を進めて国内第1号の商品となります。「人体の商品化」に対しては、安全性の確保や、原材料の入手にまつわる倫理上の問題が指摘されていますが、国内では、審査の基準などが整備されておらず、厚生省は今年度中に、安全性や品質管理の基準を定めた指針を作ることを決めました。
厚生省は昨秋、同社から治験計画届の提出を受けたていましが、人体の一部を原料とする医療材料の審査実績がないため、中央薬事審議会のバイオテクノロジー特別部会で例外的に事前審査を実施。提出されたデータによれば、安全性や品質管理に問題はないとして、今年6月末、治験に入ることを了承しました。
同社は年内に大学病院などに委託して、治験に入り患者への治療を通して、安全性や有効性が確認できれば、厚生省に販売承認を申請。同社の培養皮膚は欧州各国ですでに製造承認され、販売されています。米国でも去年から試験販売が始まっています。
国内では、血液を材料にした血液製剤など医薬品を除き、人体の一部を原料にした医療材料が審査の手続きに入った例はありません。このため、厚生省は、ヒトや動物の組織、細胞を材料に生産した医薬品、医療材料に必要な安全性や品質管理などの基準を定めた承認審査向けのガイドラインを作成することを決めました。提供者側の条件のほか、感染症の検査、製造過程で異物が混入したり、病原体に汚染されたりしていないかなどが基準の対象となります。
バイオテクノロジー特別部会の小委員会を開き、具体的な内容について検討を始めますが、英国企業の培養皮膚については、事前審査を行っていることから、この指針は適用されない見通し。
ヒトの細胞、組織を利用した医療材料の商品化は今後増えることが予想され、国内の大手医療機器メーカーが大学と提携し、培養皮膚を共同開発しているほか、愛知県に今春、設立されたベンチャー企業は、培養皮膚や関節の手術などに使う培養軟骨の販売をめざし、今秋から開発に乗り出す。複数の外国企業が培養皮膚の国内販売を検討、ヒトや動物の細胞、組織を材料にした人工腎臓、肝臓などの研究開発を進めています。
7月8日
クローン人間を原則として法律で禁止
**国の科学技術政策を決める科学技術会議(議長・小渕恵三首相)のクローン小委員会とヒト胚(はい)研究小委員会は、合同委員会を開き、クローン人間作りを原則として法律で禁じるとの見解で合意し近く上部組織の同会議生命倫理委員会に報告します。
クローン人間作りについてはクローン小委が検討を重ね、法律で規制するべきか、国のガイドラインで十分かなどで意見が分かれていましたが、合同委員会は、意図的にクローン人間を作ることは、人間の「育種」や生まれた子どもに対する人権侵害につながるなど弊害が非常に大きいとし、全面的に禁止するため強制力を持った法律による規制を行うことが適当だとしました。また、人と動物の細胞が混在する「キメラ」や、人と動物の雑種である「ハイブリッド」作りも原則として法律で規制することが適当としました。
子宮に戻せばクローン人間作りにつながるヒト・クローン胚を試験管内で作成することや、どんな細胞にも分化できるヒト胚性幹細胞の作成・使用などについては、引き続きヒト胚小委で検討するとしました。
クローン人間作りについて、米国は大統領令で連邦資金の拠出を禁止し、禁止法案も提案。欧州では英、独など、ヒトの胚を用いた研究を規制する法律の中でクローン人間の作成を禁止している国が多くあります。
6月17日
東大でがん遺伝子治療の男性死亡
**東大医科学研究所付属病院で日本で初めてがんの遺伝子治療を受けた男性(61歳)が入院先の筑波大病院で腎臓がんのため亡くなりました。
昨年末から今年の4月末にかけて同研究所腎臓がんの遺伝子治療を受けていました。
6月23日
大阪大学の学内審査委員会は遺伝子治療認める
**糖尿病などが原困で足の血管がえ死する閉そく性動脈硬化症の患者に対する遺伝子治療計画を基本的に認めることにしました。今後、小委員会をつくり計画の細部について専門家の意見を求める予定でする。正式に承認されると厚生省、文部省に申請し、認められれば生活習慣病関連で国内初の遺伝子治療となります。
6月7日
**クローン牛ドリーは早く老ける老いの印テロメア
体細胞クローンは、生まれたときにもう年をとっているのか。クローン牛「ドリー」の染色体に、老いの目印とも疑われる特徴を見つけた英ロスリン研究所とPPLセラピューティクス社の研究は、そんな疑問を呼び起こした。さらに興味深いのは、体細胞クローンだけではなく、受精後分裂が進んだ胚からつくられたクローンにも、同じ特徴がみられたことだ。海外を中心に、クローン技術を不妊治療などに使うという考え方は根強くあるが、この問題は、倫理面だけではなく、技術面からも再び論議されることになりそうだ。
英科学誌ネイチヤーに載った今回の研究で着目されたのは、染色体の両端にある「テロメア」という部分。
細胞分裂を繰り返すたびに短くなるとされ、細胞の老化と関係があるらしいとみられている。
ドリーのテロメアは、ふつうの羊よりも二割ほど短く、長さは6歳羊のものとほぼ同じだった。ちなみにドリーは、6歳の羊の乳線細胞の核をもとにしたクローンだ。
「テロメアの長さを元に戻せるのは、やはり生殖細胞だけがもつ『神秘の力』なのでしようか」。テロメアと老化について研究する石川冬木・東京工業大学教授(染色体学)はそう話す。
テロメアが短ければ、それだけ細胞の寿命も短いことを予想させる。このため、「ドリーは早く老けるのではないか」とする報道が相次いだ。
もし、クローンが、細胞を提供した「親」と「同年齢」になるとすれば、クローンを不妊治療の最終手段とみる考え方は、大きな壁にぶち当たることになる。生まれてきた赤ちやんが「すでに中年」といつた事態が起こるからだ。
しかし、PPL社の研究者らは「テロメアの長さだけで老化の程度を判断できるだろうか」と慎重だ。ドリーは今のところ元気で、4月には2度目の出産に成功している。
農水省によると、日本でも体細胞クローン牛のテロメアを分析する試みが始まっている。 ただ、今回のの実験は、新しいなぞも浮かび上がらせた。
PPL社の研究者らは、受精9日後の胚と、25日目の胎児の細胞からそれぞれつくられたクローン羊のテロメアも調べた。すると、胚クローンのテロメアは、ドリーよりは長いものの、同年齢のふつうの羊より一割以上短かった。胎児クローンの方は、ふつうの羊と長さが最も近かった。
胚細胞は体細胞に比べて細胞分裂の通算回数が少なく、テロメアの損失を補う「テロメラーゼ」という酵素の働きも活発とされる。今回の結果について「なぜこうなるのかわからない」と不思議がる専門家もいる。ネイチヤー誌の報告では、取り出した細胞を体外で培養する時間の長さなどについて議論されている。
東京農業大学の岩崎説雄教授は「胚の細胞は受精卵とも体細胞とも違い、その間に位置する。そのテロメアについてはこれまで、培養細胞では研究されてきたが、クローンの個体では初めての報告だ。個体レペルでのテロメアと老化の関係を解明する今後の研究に期待したい」と話している。1999年6月7日 朝日新聞
5月14日
東北大で肺がん遺伝子治療の計画を申請
**東北大学加齢医学研究所付属病院(金丸龍之介病院長)はP53と呼ばれる遺伝子を使つた肺がんの遺伝子治療の準備を進めていますが、厚生、文部両省の審査機関に臨床研究計画を申請しました。
同じ臨床研究は岡山大学で3月に始まったほか、4月に東京慈恵会医科大学病院が両省に計画を申請しています。
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